Bé-A Journal

大人も、子どもも。人生を快適にする栄養のチカラとは

日本は鉄欠乏大国。その実態は?

外食が続いたり、炭水化物中心の簡単な食事で済ませたりすることも珍しくない、忙しい現代社会。野菜が足りないかも?!とサプリメントでビタミン類を摂っている人は少なくないでしょう。日々の食事で不足しがちな栄養をサプリメントで手軽に補給することは有効です。
 
“不足しがちな栄養素”の中で、私たちのカラダと心に大きく影響する、意識して摂りたいものがあります。それは「鉄」。日本人の多くが鉄不足であることを知っていますか?
厚生労働省のデータによると、「鉄」は全年代において不足気味。特に生理のある10~50代女性で大幅に不足しています。症状はほとんどなくても体内の鉄が不足している状態の「隠れ貧血」と呼ばれる人口は、欧米の4~5倍!とも言われるほどです。
 
鉄は血液に含まれる赤血球(ヘモグロビン)の材料。赤血球にはカラダ全体に酸素を運ぶ働きがあります。鉄が不足すると、酸素を運ぶ力が低下して、体内は「酸欠」状態に。
「疲れがとれない」「集中が続かず、やる気も起きない」「スッキリ目覚めることができず、ぼーっとしてしまう」「イライラ、うつうつ、気分が安定しない」などは、鉄不足が引き起こす典型的な不調です。
 
鉄が不足しやすい生理中に推奨される、1日の鉄の摂取量は、成人女性が10.5mgに対し、7〜14歳は12mg。体が小さい小学校2年生から、実は大人よりも鉄を必要としているのです。
 
子どもの寝起きの悪さが、鉄不足のせいだとしたら…。鉄をしっかり摂れば、気持ちよく動けて集中力もアップ!ストレスに感じていた朝のバトルから解放され、子どもも大人も穏やかな日々が過ごせるかもしれません。

備えが肝心!貯蔵鉄ストックのすすめ

思春期以降の女性は、生理による出血で毎月多くの鉄を失います。その量は10〜30mgともいわれるほど。通常、生理以外の日では、毎日の代謝などで失う鉄の量は1日1〜2mgとされているなか、1回の生理で一気に30日分の鉄がなくなってしまうなんて!ただごとではありません。
 
生理前より生理が終わった後に、ぐったりと疲労感があったり、眠気が強くなったのを感じたら、それは「鉄が足りない!」というカラダからのSOSかも。
 
体内の鉄のうち7割近くは「機能鉄」としてすぐに使われますが、残り3割は肝臓や骨髄などに「貯蔵鉄」として、いざという時のためにストックされています。日々の代謝や、生理やケガなどの流血で大量に失われて機能鉄が不足すると、貯蔵鉄から血液へと補充される仕組み。だからこそ、日ごろから貯蔵鉄は常に満タンにして、足りなくなったらいつでも血液中に補充できる状態にしておくことが大切です。
 
例えるならば、お財布と銀行の関係。お財布(機能鉄)の中身が少なくなっても、銀行(貯蔵鉄)に蓄えがあれば、お財布に補充して使うことができます。だから、日々コツコツと銀行の方へ貯めておく必要があります。
 
貯蔵鉄を満タンにするには、推奨量の鉄を毎日しっかり摂り続けたとしても、6ヶ月ほどかかるといわれています。鉄は体内では作ることができないため、食事などで補わなければなりません。貯蔵鉄が豊富であれば、生理中も生理後も、鉄不足による不調に悩まされることなく快適に過ごせるでしょう。

さぁ、鉄を摂ろう!その前に“鉄の種類”をチェック

生理中には、20代〜40代は1日あたり10.5mg の鉄を摂るように推奨されますが、これを食事で補うには、豚ロース肉なら3.5kg、茹でたほうれん草なら1.1kg。この量を毎日不足なく摂ることは、現実的ではないでしょう。サプリメントを活用するのも選択肢の一つです。
 
より吸収が良くて副作用のないものを選ぶために、鉄の種類をチェックしましょう。鉄には、主に「非ヘム鉄」と「ヘム鉄」の2種類があります。
 
「非ヘム鉄」は植物由来の鉄。ほうれん草やプルーンがその代表格です。植物由来と聞くと、一見カラダに良さそうですが、動物由来の「ヘム鉄」に比べると、吸収率は1/5〜1/10程度。胃腸に対して刺激になるので、飲むと気持ち悪くなったり便秘になる人も。
サプリメントでは、「クエン酸鉄」「ピロリン酸鉄」というように「〜鉄」という名の原材料が使われます。
 
「ヘム鉄」は動物由来の鉄。肉・魚に含まれ、レバーには特に豊富です。植物由来の「非ヘム鉄」に比べて3〜10倍も吸収率が高く、胃腸への刺激を起こしにくい優しい鉄です。パッケージの原材料欄に「ヘム鉄」と記載されます。
 
吸収力の高さ、カラダへの優しさから、「ヘム鉄」を選びましょう。
野菜や果物から摂れる鉄は少ないことを踏まえ、食卓にもできるだけ肉類を並べたいものです。
 
「朝が弱くて、仕事や学校に行くのがつらい」「がんばりたい気持ちはあるのに、集中力が続かない」こんな積み重ねは大きな悩みにもなることでしょう。その悩みを、体質だから、年齢だからと諦めることのないように。初潮を迎えてから閉経まで、約40年間も続く生理と快適に付き合い、人生をもっと楽しむために。多くの女性たちに鉄の大切さを知って欲しいと願っています。
 

医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)