2023年以降、理工学系の大学や学部の入試で「女子枠」を設ける大学が急増しているのを知っていますか?以前から、女子枠を導入している学校は存在したものの、その数はわずか3校でした。 ですが、ここ2〜3年で国立の東京工業大学や私立の東京理科大学が次々とこの枠を採用し、2026年には京都大学 理学部と工学部でも開始が決まっています。 日本の大学において理系の女子学生の割合は、分野にもよりますが、だいたい2〜3割。とくに工学部では、2割を切っています。これは先進国の中でも最低レベルです。
こうした状況を受け、日本では、2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されるなど、国を上げて取り組みを強化しているのがSTEAM教育。STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字で略称される分野のことをいいます。 STEAM教育を進める目的は、単に優秀な女子学生を獲得することだけが狙いではありません。理系を目指す女子にとってジェンダーバランスの悪い環境は、学びやすいとは言いがたい壁となるでしょう。そう思って敬遠しているうちに、次第に夢を諦めることにつながってしまうのです。 子どもたちが早い段階から多様な選択肢に触れることは、女子が理系に進みたいと興味をもった際の障害を減らすことになるでしょう。自分の才能を自由に伸ばせる環境が整っていくことにも。 女子枠の導入は、理系分野だけのトピックでなく、女子が自分の夢や目標に向かって踏み出すための一歩とも言えるのではないでしょうか。
近年、理系分野で活躍する女性が増えてきています。医師や科学者といった誰もがイメージする理系の職業だけでなく、美容医療や化粧品科学、健康科学といった分野でも、多くの女性が重要な役割を果たしています。これまで「自分には遠い」と感じていたような理系の職業も、実は女性にとって身近で、魅力的な選択肢になりつつあります。 たとえば、美容医療や化粧品開発の分野では、肌の悩みやエイジングケアに対する女性のニーズに応えるために、女性の意見を取り入れた治療法や科学的な研究をもとに、肌にやさしくかつ、効果の高い成分を使ったスキンケア商品が作られています。 また、健康科学の分野では、女性のライフスタイルや体の特性に合わせた製品開発が進んでいます。たとえば、女性特有のホルモンバランスに対応したサプリメントや、妊娠中や産後に必要な栄養をサポートする商品なども次々と開発されています。 女性のソフトウェアエンジニアは、月経妊娠、更年期など女性特有の健康ニーズを反映させたアプリやデバイスを開発することに貢献するほか、性別を問わないソフトウェアの場合には、女性の視点が加わることで、より多様性に富む開発が叶うでしょう。 こうした職業では、最新の研究開発技術とともに、女性の感性を融合させることが求められます。男性とは異なる新しい視点や経験をもつ女性によって、問題解決への新しいアプローチが行われ、業界全体または社会のイノベーションへとつながっていくことが期待されます。 このように、身近な例をあげると、理系の職業でも女性が豊かに活躍できる場が広がっていることがわかるのではないでしょうか。
大学入試に「女子枠」が導入されはじめたのは、女性が理系の分野で自由に挑戦できる環境を作るための大切な一歩です。これにより、女性が選択の幅を狭めずに、自分の興味や夢を追いかけやすい環境になるでしょう。 ただ、制度が整うだけではすべての問題が解決するわけではありません。特に、「女性は理系科目が苦手」「女性は家庭や育児でキャリアを全うできない」「男性の方が能力が高い」といったまだ多くの場所に残っている無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)をなくすことが何よりも大切です。 そのためには、家庭や学校、職場など、さまざまな場所での意識の改革が求められます。周りの人々が「女性には向かない」という固定観念を持たず、女性が理系に進むことを自然に応援できる社会を目指すことが求められます。 未来を切り拓くのは、性別ではなく、やりたいと思う意欲や情熱です。自分が心から望む場所で、制限なく夢をかなえていく社会が実現できるように、私たちは一人ひとりの可能性を信じ、支え合うことが大切です。 自分の夢を追い続け、自己実現を果たせる環境を整えることが、より多様で豊かな社会を作る鍵となります。 理系大学の改革は、まだ始まったばかり。制度だけでなく、女子が学びやすい環境の整備や、社会全体の理解が進むことで、ようやく未来への扉が開かれるでしょう。 そうして初めて、誰もが自由に夢を実現できる社会につながっていくのではないでしょうか。