「ジェンダー・ギャップ指数」をご存知ですか?これは、各国の男女格差を数値で示したもので、日本は153カ国中、121位(2019年)。残念ながらG7の中では最下位で、しかもランクは年々下がっています。医大の入試でのあからさまな女性差別が問題になったのもつい最近のことですし、一院制の議会または下院で占める割合を比較したところ、女性衆議院議員比率が10.1%(2019年)とG20でも最下位だったりと、課題は数値にも現れています。
今でこそ遅れをとっている日本。けれど、私たちが知っている「生理休暇」を、世界に先駆けてスタートさせたのは、実は日本なのです。 現在では、生理休暇の取得率の低さが指摘され、それよりも社会の多様性への理解を深めるべく、今の時代に沿ったさらなる制度の設計が叫ばれ始めていますが、生理休暇を定めたり、男女雇用機会均等法を制定させたり、先人たちは多大な努力を重ね、少しずつ社会を変えてきたのです。そんな意識を受け継いて発展させていくため、今回はちょっと視点を変えて、生理と経済の関係について考えてみます。
たとえば少子化。2019年、1人の女性が生涯に生む子どもの数にあたる出生率は1.36、出生数は過去最も少ない86.5万人でした。推計よりも早いスピードで減少しているといわれています。これに反して、高齢者の割合はうなぎのぼり。2019年、65歳以上の高齢者は総人口の28.4%で過去最高となりました。 これからの日本でどんどん労働人口が減っていくのは明らかです。そんな中で、きちんと教育を受けた女性たちがこんなにたくさんいるというのは、日本の大きな財産。男女垣根なく手を取合い活躍することは、社会を支える大きなパワーとなりえます。
また、「生理が辛い/不便である」というのは本人だけの問題ではなく、実は社会にとって、また経済にとっても大きな損失です。就業中に何度もトイレに立たなければならなかったり、痛みを我慢していればどうしても生産効率は下がります。仕事中や育児中などに、ナプキンを替えるのがままならず困ったことは、ほとんどの人が経験しているのではないでしょうか。
ただ、そうやってひたすら我慢をし、耐え忍ぶ時代ではなくなってきています。それに、生理が辛いからとケアしたり休暇を取るのは、本人のためだけではありません。仕事の効率を上げる、より快適に過ごせるようになれば、周囲の人々や経済、それに社会全体に大きなインパクトを与えるはずです。
社会構造やライフスタイルの変化を受けて、社会で活躍する女性たちは増加しています。1986年には53.1%だった女性就業率は、30年間で66%に。13%も上昇しました。その中には多くの医療従事者も含まれており、今年猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症の治療にあたるなど、重要な局面で女性たちが社会を支える大きな力となっていることは間違いありません。 また、こうして今後活躍する女性がさらに増え、女性管理職の割合が高くなることで、性別による賃金格差の課題への取り組みがさらに大きなものとなり、ジェンダーギャップを解消する原動力にもつながるでしょう。
実際に、こうして「女性の力を活用する」ことの重要性は経済界でも注目を集めています。経産省のヘルスケア産業課の調査では、「女性特有の健康課題などにより職場で困った経験がある」と答えた女性従業員は5割にのぼり、これらの「月経随伴症状などによる労働損失」は4911億円という報告がありました。 生理をはじめとした女性のヘルスケアは、その本人のためだけでなく、会社のためにも、社会のためにもなる。そんな気づきと「快適に過ごしたい」という強い願いで、社会はさらに変化していきそうです。