トキシックショック症候群(以下TSSと表記)について耳にしたことがあるかもしれません。あるいは「タンポン使用によって命を落とした」という、衝撃的なニュースを見たことがある方もいるでしょう。TSSとは、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる病気のこと。今回は、正しく知っておきたいTSSについてのお話です。
そもそも、黄色ブドウ球菌は皮膚や鼻の穴、脇の下、足の付け根などにごく当たり前に生息している菌です。3人に1人の割合で持っているバクテリアで、通常は害を引き起こすことはありません。ただ、ごくまれに繁殖して毒素を産生してしまうと、発熱や吐き気、めまいといった症状を伴うTSSとなってしまうのです。
たとえば、やけどや手術後の局所感染など、TTSは年齢や性別に関係なく生じる可能性があります。ただTSSについて生理と合わせて知っておくべきなのは、タンポンの長時間使用が原因になりうるということ。あまりにも珍しいケースなのでそのメカニズムはまだはっきりしていないのですが、海外では死亡例の報告もあります。
そう言われると「タンポンは怖い」と思ってしまうかもしれませんが、これはあくまでも長時間使用の場合。 新宿区にある、みずえクリニックの平石瑞恵医師によると、 『膣内に直接挿入するタンポンや月経カップと違い、経血を受け止めるだけのナプキンや生理用ショーツなどは、あくまで落ちてくる血液を受け止めて抱えているもの。TSSを起こす可能性は非常に低いと思われます。タンポンも、装着時間や方法を守れば怖がらなくても大丈夫。タンポン製品の仕様書にも「8時間以上の使用は避けるように」と記載があります。唯一、タンポンは体内に挿入するという点での注意が必要です。 タンポン使用そのものに問題があるわけではなく、清潔な手で使う・正しい位置に挿入する・こまめに取り替える・挿入していることを忘れないといった、いわば当たり前のことに気をつけることで安全に使うことができます(※タンポン使用については、免疫力が低下している方など、持病のある方は主治医にご相談ください)。正しく使えば、タンポンは生理中も快適に過ごせる、便利で頼もしいツールになってくれます。』とのこと。
また、膣内に直接挿入するタンポンや月経カップと違い、経血を受け止めるだけのナプキンや吸収型の生理ショーツの使用によるTSSの報告はありません。タンポンは医療器具に近い立ち位置ですが、経血を受け止める生理用品は皮膚に触れているだけなので、TSSを引き起こす要因にはなりにくいのです。
「菌が繁殖する」という現象は、たとえば口内炎など私たちの身近にありふれています。あかぎれができた手で料理をしたら食中毒を起こしてしまった、といった事例のほうが、TSSよりもはるかに多く生じています。 そもそもTSSは「ずっと医師を続けていても、TSS患者に出会う医師はほとんどいない」と言われるほどのレアなケース。過度に怖がるのではなく、正しい知識を携えて生理用品を使い、そのメリットを存分に享受しましょう。特に毎月のように訪れる生理は、便利なツールを正しく使いこなすことでぐっと快適になるのですから。