近年、各国で「生理の貧困」についてクローズアップされる機会が増えていますが、まず「タンポン税」という言葉はご存知でしょうか。 ここでの「タンポン」は、タンポンだけでなく、生理用ナプキンなどの女性用生理用品全般をさします。それらの生理用品を必需品とみなし、必需品であるにも関わらず消費税などの付加価値税が課せられている事実に対して注意喚起のために用いられている言葉が「タンポン税」です。 現在日本では、対象となる商品の消費税を、標準の税率(10%)よりも低い税率(8%)とする軽減税率制度が導入されています。この制度は、おもに低所得者に対する税負担を軽減させるため、個人が生活していく上で欠かせない「生活必需品」を対象に実施されているもの。では、その「生活必需品」として具体的になにが対象品目とされているかというと、「(酒類・外食を除く)飲食料品」と「新聞」です。 ここで多くの人の疑問となっているのは、生理用品は生活必需品ではないの?ということ。生理用品なくして毎月の生理期間を過ごすことは考えられません。まさに、生活において欠かせないはずの生理用品には10%の消費税、つまり「タンポン税」がかけられているのです。 個人差はありますが、私たちが生涯に生理に費やす期間は、年数にすると約7年、日数にすると約2400日間にもなるといわれています。1ヶ月に生理用品代が1,000円かかると仮定すると、生涯で50万円近くの負担に。 さらに、痛み止めやピル、生理用ショーツなどをあわせるとさらに負担は大きくなります。 国際NGOプラン・インターナショナルが2021年4月に発表した「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査結果」によると、15〜24歳の女性 2,000人のうち、約36%の女性が「生理用品の購入・入手をためらったことがある」と回答。さらにその中で、収入や価格を理由にあげる人が8割をも占めています。 新型コロナウイルスの影響による経済的な理由で、生理用品が買えなくなる子どもや若者が増えている現状もあり、生理の貧困は世界中で大きな問題に。 世界ではタンポン税廃止の動きを見せる国もあり日本でも注目が集まり始めています。
世界に先駆けてタンポン税を廃止したのはケニア。2004年のことです。 それに続き、カナダ、オーストラリア、インド、マレーシアなど様々な国で生理用品への課税を廃止しています。 最近では、2021年11月にアメリカのミシガン州で、生理の貧困改善を訴えてきた女性知事によってタンポン税の廃止が決定。アメリカでは、この他にも複数の州でタンポン税を廃止にしています。 イギリスでも2020年12月31日のEU離脱にともない、生活必需品ではない「贅沢品」としてそれまで5%の付加価値税がかかっていた生理用品の、税の撤廃が行われました。 ドイツでは、「贅沢品」として扱われていた生理用品が「日用品」という位置付けに変更され、2020年に課税を19%から7%に引き下げられました。 しかし、タンポン税を廃止したり、税率の引き下げを行う国がある一方で、タンポン税を再導入するといった国も。 アフリカ東部タンザニアでは、タンポン税の廃止を決定後、非課税化が望む結果をもたらさなかったという理由により、生理用品への課税が再導入されました。生理用品の入手が困難であったり月経への偏見があることで、女子生徒が学校へ通えなくなったり、退学したりすることも多いにも関わらず、いまだ女性の人権をないがしろにしてしまっている政策に。 また、生理用品への課税を廃止にしたイギリスでも、環境問題に貢献し得る生理用吸水ショーツは非課税対象にはなっておらず20%もの税が課されているなど、各国タンポン税に対してあらゆる措置をとっているものの、まだまだ試行錯誤の状況であることが伺えます。
日本でも、今まで話題に上がりにくかった生理の問題について、少しづつ取り上げられるようになったことで、生理用品を無料提供する自治体が増えはじめています。 内閣府男女共同参画局が2021年7月に行った調査によると、「生理の貧困」に関連した取り組みの実施を把握した地方公共団体の数は、581団体(実施した・実施を検討している団体を含め)。生理用品の調達元としては、防災備蓄や予算措置(予備費の活用も含む)、企業や住民等からの寄付が多いとのことです。 生理の貧困に対する取り組みを行う自治体が増えていることはとても喜ばしいこと。しかし、生理用品が配布される場所や期間は限定されていることが多く、毎月確実に必要な量をまかなえるわけではないのが現状です。 生理は毎月やってくるもの。女性が受ける不条理や貧困をなくすためにも、各自治体の努力だけではなく、日本の政策として生理用品の位置付けを改めて見直すフェーズに入っています。 一時的な支援ではなく、生理用品が生活必需品として軽減税率の対象になること、さらには生理用品が非課税になることで、男女が平等に生きることができる世界に一歩近づくのではないでしょうか。