「女性ホルモンが、女性の身体の調子を左右する」といっても過言ではないほど、女性にとって大きな存在の女性ホルモン。女性ホルモンが正常に分泌されるためには、心も身体も健康であること、これがとても重要です。 忙しい現代社会では、毎日慌ただしい生活をしているとどうしても食事が不規則になり、栄養も偏りがち。女性ホルモンと食べ物には密接な関係があるため、不規則な食事は女性ホルモンのバランスに影響を与え、更年期や月経前症候群(PMS)などの不快症状につながる可能性もあります。 なんだか体調がすぐれない、イライラしやすい、疲れがとれない、そんな不調はホルモンバランスの乱れが原因かもしれません。 つらい更年期や月経前症候群(PMS)の症状を穏やかにするひとつの手段として、食生活を見直し、女性ホルモンのバランスを整えることを意識してみましょう。
女性の身体の不調にはホルモンバランスが影響していることが多く、更年期や月経前症候群(PMS)もホルモンバランスが乱れることで引き起こるとされています。 更年期は、心身ともに大きく変化するステージ。更年期を迎えると卵巣機能が低下するため、女性ホルモンのひとつ、エストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌できなくなります。 そのことによってホルモンバランスを保つことができなくなり、起きる心身の症状が「更年期症状」と呼ばれます。 その症状は多岐に渡りますが、たとえば、ほてりや発汗、冷え、動機、めまい、不眠、イライラ、うつなどの不調が挙げられます。便秘や下痢、背筋痛や関節痛、ドライマウスや性交痛など全身に表れる不調も更年期に関連しているといわれていますが、すべての人にすべての症状が等しく表れるわけではなく、そこには個人差が大きくあります。 月経前症候群(PMS)は、月経=生理が来る前の3~10日のあいだに続く、精神的あるいは身体的症状のこと。生理が始まるとともに症状が軽くなったり、なくなったりします。 PMSが起こる原因は、実ははっきりとはわかっていないのですが、女性ホルモンの変動が関連していると考えられています。 排卵のリズムがある女性の場合、排卵から生理までの期間に、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。PMSは、妊娠しなかった場合、エストロゲンとプロゲステロンが生理前に急激に減少し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことで起きる不調とされています。そのほか、食事や生活習慣、ビタミンB6不足などが関係しているとも。 精神的な症状としては、情緒不安定になったり、イライラや怒りっぽい、さらには不安感、眠気、集中力の低下などが挙げられます。身体的な症状としては、腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。また、自分の意識とは別に起こる自律神経の症状もあり、のぼせや食欲不振・過食、めまい、倦怠感などが起こる場合も。これらの症状の有無や大小も人によってさまざまです。 このように、更年期や月経前症候群(PMS)はホルモンバランスと大きく関係している可能性があることがわかります。 不規則な食生活をしていると自律神経のバランスが乱れやすくなり、自律神経のバランスの乱れはホルモンバランスの乱れにつながるため、毎日3食規則正しく食事をとることはホルモンバランスを整えるためにとても大切なこと。特にエストロゲンの変化は健康への影響が大きいとされているため、適切な栄養をとる必要があります。 では、ホルモンバランスを整えるためにはどのような食生活を心がければよいのでしょうか。
女性ホルモンと上手に付き合うためには、女性ホルモンによる不調を整える栄養素を摂取することがポイント。 ホルモンバランスが乱れやすい食事例としては、 ・朝食をほとんど食べない ・食事時間が決まっていない ・インスタント食品やファストフードなどが多い ・野菜をあまり食べず、お菓子など甘いものを好む ・水分をあまりとらない などが挙げられます。 バランスよく摂りたい食品群は、「 肉・魚・乳製品・卵」「野菜」「きのこ類」「いも類」「大豆食品」「青魚」「海藻類」「ゴマ・ナッツ類」の8つ。 たとえば「 肉、魚、乳製品、卵」は、女性ホルモンのもとにもなるコレステロールを補うためのタンパク質に。植物性・動物性、両方のたんぱく質をバランスよくとるのが理想です。 「大豆食品」は、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをする大豆イソフラボンが豊富に含まれています。大豆イソフラボンの中には「ダイゼイン」という成分が含まれており、腸内細菌によって代謝されると「エクオール」という物質に変化します。このエクオールがエストロゲンと似た働きをもっているのです。 正しい食事バランスは、主食:副菜:主菜=3:2:1が理想的。そしてバランスよく栄養を摂取する代表の料理が「和食」です。和食は、野菜・海藻・きのこ・大豆など、必要な栄養を取り入れやすく、タンパク質や脂質の量を整えやすいメニューが豊富です。その反面、和食は塩分が多くなりがちなので、減塩にも意識を。 生理と同様に、更年期にあらわれる症状も100人いれば100通り。更年期の症状は加齢とともに誰にでも起こることでありますが、「そういう年齢だから仕方ない」と諦めるのはもったいないこと。また、PMSも「体質かな」で終わらせず、まずは自分自身に気を配り、取り組める対策に目を向けると良いでしょう。 更年期やPMSの症状が重い場合は、その不調の原因が別の病気である可能性もあります。少しでも違和感を感じたり、不安に思うことがあれば、迷わず医療機関へ相談しましょう。 更年期は約10年、PMSは毎月付き合っていかなければなりません。 身体の不調を感じる時、まずは生活習慣の基本に立ち返り、ライフスタイルを正すこと、特に食生活を見直すことからはじめませんか。 医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)