Bé-A Journal

女性アスリートが抱える特有の課題

昨今、スポーツ界では女性アスリートの活躍に一層の注目が集まっており、東京五輪でもその活躍が期待されています。一方で女性アスリート特有の健康課題も明らかになってきました。

それは、「生理」です。スポーツ界でも一般同様にこれまで「生理」はタブー視され、生理での体調変化や不調などは黙って我慢するという暗黙の雰囲気がありました。しかし今、その状況が大きく変わりつつあります。

女性アスリートのオーバートレーニングが月経不順や無月経などを引き起こすというのはよく知られていますが、国立スポーツ科学センター(JISS)が国内トップレベルの女性アスリート683名を対象に実施した調査結果では、無月経を含む月経周期異常のあるアスリートは約4割にも上りました。しかし彼女たちの婦人科受診率はとても低く、自身の不調に対応できず我慢しているアスリートが多い現状があります。

生理中の無理なトレーニングは、生理痛を悪化させる可能性もあります。また、大事な試合・大会に生理が重ならないか、漏れないだろうかと心配することで、競技に集中できないことも。これらは競技のパフォーマンスを低下させるだけでなく、選手の心身の健康にまで影響していることが大きな問題と言えるでしょう。

女性には特有の周期があり、生理中に通常時と同じパフォーマンスを求められるのは、女性にとって酷なもの。これらの問題は、トップアスリートに限った話ではありません。スポーツをするすべての女性、そして体育やスポーツの習い事がある子どもたちにも言えることです。

生理周期とスポーツコンディション

日本のスポーツ医学を研究する団体において行われたある調査では、多くの女性アスリートが月経周期とコンディションには関連があると回答。これはアスリート以外の女性も共通するように、PMS(月経前症候群)などで集中力が低下し、仕事のパフォーマンスが下がることと同じです。

一方で、この女性特有の周期と上手く付き合うことでパフォーマンスを上げているスポーツチームが海外に存在します。
それは米国と英国の女子サッカーチームです。米国ではいち早く、女子サッカー選手のパフォーマンス向上に生理周期を活用。2019年ワールドカップ(W杯)で優勝した米国代表チームでは、その少し前から選手の生理周期を記録し、それに合わせたトレーニングをしていたのです。
生理には、経血を伴う月経期、生理後の排卵前期、そして排卵開始から月経前症状が出る時期、そして多くの人が体調不良や心身の乱れを感じやすい月経前期と4つの周期があります。
英女子サッカープレミアリーグのチェルシーFCでも、生理周期によってトレーニング内容を変えています。チェルシーによると、生理周期によって選手の体調にはさまざまな変化があること、そして生理前と生理中には体の動きが鈍る可能性が高まり、けがのリスクが高まることが科学的にわかっているといいます。加えて、前十字靭帯のような軟部組織のけがは、ホルモンの変化や生理と関係していることが、これまでの研究で示唆されているのです。

上手な付き合い方の選択肢を知る

近年では、現役引退した選手や妊娠 ・出産 を経験した選手が、女性アスリートと生理の問題について声をあげるようになりました。生理は100人いたら100通りあるように、人によっては月経前の時期に体重が大きく変わることもあります。またPMSや月経 困難 症により心身ともに不調が出る人もいます。そして経血の量が多い人の中には、競技中に漏れないように工夫をしていても気になって競技に集中できないことがある、なんてことも。これらは個人差が大きく、女性と一口に言ってもパフォーマンスが良い時期は人によって異なります。

そこで女性アスリートの間では、コンディション維持を目的とした低容量ピルの利用も普及し始めています。低容量ピルは、オリンピックでもドーピング対象にならないことが正式に認められており、2012年のロンドンオリンピックでは156名のうち7%だった利用者が、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは出場選手の27.4%にまで増加しました。低用量ピルの服用は、月経困難症やPMSなどの症状を訴える女性アスリートのコンディショニングを整える方法として活用が期待されています。

生理のトラブルで大事な試合や大会を諦めなくてもいいように、そして少しでも不調を感じたら「スポーツをしているから仕方がない」「よくあること」とそのままにせずに、まずは婦人科を受診しましょう。身体の変化や不調は、自分でしかわかりません。スポーツに取り組むすべての女性が、生理との上手な付き合い方を実現することで、よりスポーツ界における女性の活躍の場がさらに広がり、輝かしい可能性を発揮できることを願っています。