かつて子どもだった私たち。自分自身の「初めての生理」を思い返すとき、それぞれ蘇る記憶があるのではないでしょうか。 そして、多かれ少なかれ「初めての生理」に不安な気持ちを抱えていたはず。 その不安はどこからやってくるのでしょう。生理という初めての経験への、「わからない」「知らない」といった知識の不足からきているのではないでしょうか。 知らないことに不安を感じるのは、当たり前のこと。思春期の多感な時期だからこそ余計に、友達とくらべて焦ってしまったり、突然生理がくるかもしれない不安や、なかなか生理がこない不安などを感じやすく、もっと生理について教えてもらえていたら…なんて考えることも。 現在の日本では、小学校過程で学ぶ性教育の内容がとても限られている現状があります。 性教育は、妊娠や出産の仕組みを教えることが主軸になっていますが、生理の仕組みや、体と心の変化、生理との付き合い方も含まれます。 しかし、具体的にどんな生理用品があるのか目で見て触れる機会や、PMSの乗り越え方、婦人科受診の大切さなど実践的な内容に触れる機会はほとんどなく、大人になるにつれ、自分で探り探り学んでいくというのがセオリー。だから、親になった自分たち自身も正しい生理の仕組みや病気のことをきちんと理解していないことが多いため、子どもに自分たちから教えることもためらわれてしまっていることも。 小学校過程では十分な知識を得ることが難しく、「学校の性教育だけでは物足りない」「もっと踏み込んだ知識を正しく教えて欲しい」という保護者や、知識がない中で漠然とした不安を抱える子どもたちが多くいます。 かつて同じような不安や思いと向き合い、前に進んできた私たち大人の願いは、もっと心地よく生き、もっと自由な子どもたちの未来です。 心も身体も変化が大きい時期に、子どもが安心して過ごせる知識や環境を整えることができるように、学校の性教育だけでなく家庭でもしっかりと「初めての生理」について理解を深める必要があるのではないでしょうか。
家庭で生理について話をする際は、まず身体の成長は恥ずかしいことではなく喜ばしいことであると、肯定的な話し方をすることを意識して、生理は「健康で元気な証拠」であることを伝えましょう。 その上で、生理について理解を深めるために、例えばこんな話ができると良いと思います。 ①生理はなんのためにあるのか。 まず前提として、生理というのは赤ちゃんを産むための身体の仕組みで子宮が育ったしるしなんだよ、という話をしましょう。面倒なことではなく、生きていく上でとても大切なことであると最初に伝えることで、不安や怖いといった気持ちを取り除くことができます。 ②生理とは、1ヵ月くらいのリズムで膣から血液みたいなものが出るようになること。 大人の身体へ成長する第一歩、と前向きな捉え方になるような伝え方をすることで子どもは安心して生理を受け入れることができます。いつ初潮を迎えても、「よかったね。」と声をかけてあげることが安心感につながるのです。 ③初潮の平均は12歳くらい。しかし、なかには小学校3年生未満でも来る子も。 身長や、体重、性格などみんなそれぞれ個性を持ち、違いがあるのと同じように、生理が始まるタイミングも人それぞれであることを伝えましょう。 早いことを恥ずかしく感じたり、遅いことを不安に思う子は多くいます。「もうきたの?」「まだこないの?」といった発言は子どもにとってプレッシャーとなってしまうので、子どもの心に寄り添った声かけを意識したいものです。 けれど、ある程度の目安を知っておくことは必要なこと。高校生までに来なかったら疾患などが原因の可能性もあるので、様子をみながら子どもと一緒に婦人科の受診を。 ④初潮から1、2年は生理のリズムも量も不安定。 生理の量は個人差があり、同じ人でも多かったり、少なかったり、月によって変わることがあります。少しの量で気のせいかな、と思えても教えてね、と日頃から伝えておけると良いでしょう。また、生理の血が真っ赤ではないこともあり、最初は黒っぽい色で生理だと思わない色の人もいるかもしれないことを伝えておくことも大切。 ⑤生理期間はだいたい4〜7日程度。 一般的には2日目が一番経血量が多く、3日目から量が少なくなる人が多いことを伝えましょう。これにも個人差があることと、生理期間が大きく変わる場合には相談してね、と伝えておくのも重要です。 ⑥生理が始まったら、カレンダーをつける。 子どもが自分自身の生理周期を知るためにも、子どもと一緒にカレンダーをつけてあげると良いでしょう。最近ではスマホのアプリで簡単に記録もできるので、親子で一緒に利用しても良いかもしれません。また、周期を把握し、その月に生理が始まりそうなときには一緒に生理用品を準備してあげることで、急にくる不安も解消されるはずです。 10代はまだ大人になる途中。子宮も卵巣もホルモンの分泌も、まだ未熟なので、生理周期が定まらないもの。定まらない周期に不安を感じさせないように、生理周期が安定するには、初潮から数年はかかることも伝えておきましょう。 ⑦生理の時に起こること 生理中は、身体にさまざまな変化が起こります。学校で詳しく習っていない場合は、「生理痛」というものを知らないことも多いため、親子で話し合っておくことはとても大切です。 生理の前後で、怒りっぽくなる、お腹が空く、下痢・便秘になる、眠たくなる、お腹が痛くなる、胸がはる、お腹がはった感じになる、ニキビができる、頭が痛くなるといった症状もあるということを知っておくことで、自分の身体への理解にもつながります。 70〜80%の人に生理痛が起きると言われているので、上手な付き合い方ができるように、ご自身の体験談などを踏まえながらアドバイスをしてあげてください。 ⑧生理以外の期間に起こること 生理前にはPMS(月経前症候群)という症状がでることがあります。こちらに関しても知らない子どもは多いもの。生理予定の1週間前に、突然お腹が痛くなったり、体調が悪くなったり、イライラしたり、怒りっぽくなったり、どうしてこんな体調不良や気持ちになるのかを、理解しておくことだけで、気持ちが少し楽になるはず。 また、子どもたちにとって婦人科を身近なパートナーにするのも親ができることのひとつです。 なにか不安がある時、“婦人科”という選択肢が子どもたちに思い浮かぶように。 親子で婦人科の大切さを話し合い、気兼ねなく受診できるように導いてあげましょう。
生理用品には、紙ナプキン、タンポンがあり、その他のサニタリーアイテムとして吸水ショーツ、布ナプキン、月経カップなどがあります。現在日本では使い捨ての紙ナプキンの使用率が大半を占めており、タンポンの使用率は2割程度。 初潮を迎える前に、生理についての話をしながら、それぞれの使い方を一緒に確認してみましょう。 メリットやデメリットについても話ができて、使いたいと思えるアイテムを選べたり、用途に合わせて使い分けができることで、子どもたちのサニタリーライフの充実にもつながるはず。 使ってみてどうだったかの感想もぜひ聞いてあげたいものです。 紙ナプキン 一般的に生理期間に使う人の多い、「使い捨て」サニタリーアイテム。 汚れたら捨てる手軽さで人気が高い。交換頻度が多く、常にストックを持ち歩く不便さと、環境負荷の大きさがデメリット。 タンポン 生理中の入浴やプール時などに使用できる挿入型の「使い捨て」サニタリーアイテム。 血が流れ出る感覚がなく、漏れにくさがメリット。慣れるまで挿入の難しさや怖さを感じることも。 吸水ショーツ ショーツ自体が液体を吸水し、洗って繰り返し使えるサニタリーアイテム。 1日交換不要で快適度が高く、ナプキンのようにズレる心配が少ないため漏れにくいことがメリット。ゴミが出ないので環境にもやさしい。自分で洗うことに慣れるまで抵抗がある人も。 布ナプキン 布に液体を吸水させ、洗って繰り返し使えるサニタリーアイテム。 ゴミが出ないので環境にもやさしい交換頻度の多さと自分で洗うことに慣れるまで抵抗がある人も 月経カップ 膣内に挿入して経血を溜めて繰り返し使えるシリコン製のカップ。 流れ出ることがなく、デリケートゾーンが清潔に保てて快適。ゴミが出ないので環境にもやさしい。経血を捨てる手間や挿入への抵抗、煮沸消毒の手間も。 私たち大人にとってはお馴染みの生理も、子どもたちにとっては不安でいっぱいで、それを口にすることすら難しいもの。大人はその繊細な心を汲み取ってあげることが大切です。そして、「いつでも聞いてあげるよ。」「何かあったらすぐに言ってね。」そんな声をかけてあげることが子どもの安心感につながります。話せる人がいる、理解してくれる人がいる、そんな心強い存在がなにより自分自身を大切にすることにつながるでしょう。 生理は必要なものだから恥ずかしかったり隠さなくていいんだよ、生理は個人差があって人それぞれだから誰かと比べる必要はないんだよ、と伝えて、これから生理をむかえる子どもたちが少しでも前向きなサニタリーライフのスタートがきれるように、一緒に生理に向き合ってあげてください。 わずらわしいと思ってしまうこともあるけれど、とても大切な生理。 できるだけ快適に自分らしく過ごせるように、周りの大人が明るく自由な未来へ導いてあげましょう。 医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)