10月11日は「国際ガールズデー」。女の子たちの教育を受ける権利を守り、社会的地位の向上をめざすために制定された日です。 途上国では、経済的・文化的な理由により学校に通えず、10代前半での結婚を余儀なくされ、貧困の中で暮らしている女の子が多くいます。 では、女の子が不自由な思いをしているのは途上国だけかといえば、そうではありません。先進国においてもさまざまな課題が存在しています。 2023年に世界経済フォーラム(WEF)が発表したジェンダーギャップ指数で、日本の順位は過去最低を記録し、とくに政治分野に関しては、146カ国中138位。「世界で最も低い水準」と指摘されています。衆議院の女性議員比率は1割にとどまり、過去に女性首相が一人もいないことも下位である一因なのだそう。 女性議員が少ないということは、それだけ女性の声が届きにくいということ。女性のニーズに目が届かない、もしくは、女性からの意見を“少数派”と見なされる状況が生まれてしまうのです。女性議員の数が増えることで、女性が必要としている政策の実現性が高まるでしょう。 司法の場においても、現在、最高裁判所判事のうち女性はわずか2名*。 政治や司法の世界において今だ男性優位な日本では、女性が自由に自己を叶えていくことに困難な場面があるのは当然なのかもしれません。 WFEの報告によると、将来的に収入や重要性が高まると予想されるSTEM=Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学) 分野での女性の割合が少ないことも課題です。今のペースでいくと、世界全体での男女平等の達成は2154年になるだろう、と警鐘を鳴らしています。 *2023年10月現在
ある研究によると、女の子は5歳くらいから「女の子は何でもできるし、何にでもなれる」と信じなくなり、「自分は男の子よりも劣っている」と認識して自信を失い始める傾向があるそう。周囲の大人やメディアなどの情報に触れることで、自分の限界を低く設定してしまい、「リーダーは男性である」というステレオタイプをもち始め、やがて自分の将来の可能性を小さくしていく。それが「ドリームギャップ(夢と現実の差)」。 ドリームギャップの背景には、社会に広く浸透している、「女性はこうあるべき」「男らしい」「女らしい」といった男女の役割を固定的に考える「ジェンダーバイアス」があります。 例えば、「男まさりだね」と、褒め言葉のように言うのを聞いたことがありませんか?女性にはできないはずのことなのに男性のようにできた、というこの言葉に違和感すら感じない、それが日常に存在するジェンダーバイアスです。無意識で悪気のないジェンダーバイアスをまずは理解し、性差を解消していくことが求められるのではないでしょうか。 <日常に存在するジェンダーバイアスの例> 色や形 子どもに対して、「女の子はピンク」「男の子は青」といったイメージを抱くこと。本来、色や形は性と関係はありません。 言葉 育児を行う男性を指す「イクメン」や、理系の女子を表す「リケジョ」という言葉。これらは、育児は女性がするものという固定観念や、理系に進むのは男子という先入観から生まれた言葉です。 能力 女性は細やかな気配りができる、男性だから体力があるなど、男女の違いにより能力を決めつけること。能力は、男女の違いに関係なく個人に備わっているものです。ジェンダーバイアスによる問題の1つ目は、個人の能力や個性が生かされないこと。「理系に進むのは男子」「料理は女性が得意」などの先入観があると、自分の得意なことや適正に合う人生の選択が難しくなります。 2つ目は、性差によって職業に違いが生じたり、賃金に反映されること。「責任のある仕事は男性」「男性は仕事をして家計を支えるべき」「事務作業などの簡単な仕事は女性がすべき」といったジェンダーバイアスは、女性の活躍の機会を奪うだけでなく、女性が男性に比べて安い賃金で働かざるを得ない状況を生み出します。
ドリームギャップのない豊かな社会をつくるためには、ジェンダーバイアスを解消する取り組みが必要ではないでしょうか。まずは、問題の根本にあるジェンダーへの意識に目を向けることから始めましょう。 子どもたちは学校でも「男女は平等である」「個性が大切である」と教わりますが、一方で、ジェンダーバイアスを持った社会や大人から影響を受けるケースは多く、知らず知らずのうちにジェンダーバイアスを植え付けられている可能性があります。私たち大人から日常の中のジェンダーバイアスを見つけ、一つ一つ丁寧に向き合っていきたいものです。
ドリームギャップのない世界は、性別を問わずすべての人の幸せに生きる世界とも言えるでしょう。理想的とはいえ壮大でもあるテーマに、そうはいっても世の中はすぐには変わらない、自分一人の意見の影響はあまりに小さすぎる、そう感じるかもしれません。ですが、いつだって世界を変えてきたのは一人ひとりの想いなのです。私たち大人が“仕方ない”と諦めないことが、大切な歩みになります。
「あなたは何にだってなれる」
私たち大人が自信をもって子どもたちに声をかけましょう。 ドリームギャップをなくし、すべての子どもの可能性を広げ、自由で制限されない夢をサポートしていきましょう。