秋の気配を色濃く感じるこの頃、「疲れがたまって抜けない」「朝になっても眠い」、そう感じながら過ごしていることはありませんか。もしかしたらそれは「自律神経の乱れ」が原因かもしれません。 季節の変わり目のこの時期は、気温や気圧が大きく変化するとき。 朝夜と日中の寒暖差や、室内と室外の温度差に身体が対応しようとすると、急に身体を温めようとエネルギーを消耗し、あっという間に体力が奪われます。また、自律神経が過剰に働き、疲労をもたらすことに。やがて身体が対応しきれなくなり、自律神経が乱れがちになります。 よく耳にする「自律神経」。実際、何をしているかご存知でしょうか? 呼吸したり、心臓や胃腸など内臓を動かしたり、血流や体温調節など、自分の意思とは無関係に身体の調子を整える働きは、すべて自律神経によるものです。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。 身体にとって交感神経は「昼」に優位になるONのスイッチ。活動的になり、仕事や家事など日中の行動がはかどります。一方、副交感神経は「夜」に優位になるOFFのスイッチ。心身の緊張をゆるめ、身体が休息タイムに入ります。 この2つの働きが人の身体のバランスを保つ役割をしています。 しかし、睡眠不足やストレスなどがきっかけで脳の緊張状態が続くようになると、交感神経が活発に動いて神経が高ぶり、自律神経のバランスが乱れます。そしてその乱れは、自律神経とかかわりが深いホルモンバランスにまで影響し、長期的な不安や不調へとつながります。 心身ともに健康でいるためには、このON/OFFのスイッチのバランスが大切なのです。
私たちの脳には、視床下部と呼ばれる部位があります。視床下部は、自律神経をコントロールする中枢にあたる部分。この視床下部では、「女性ホルモン」の分泌を調節している脳下垂体という部位も同時にコントロールしているため、一方のバランスがくずれると、もう一方もバランスがくずれるなど、相互に影響を受けやすいとされています。 自律神経が乱れることであらわれる不調はさまざま。不眠、気分の落ち込み、めまい、動悸、だるさ、頭痛…。さらに、自律神経の乱れがうつ病や神経性胃炎などのきっかけになることも。 女性に身近な不調のひとつが、「生理痛」。 生理痛の原因は、プロスタグランジンと呼ばれる生理活性物質です。生理時に子宮内膜が剥がれ血液とともに出されるのですが、そのために子宮を収縮させて外に押し出す力が必要となります。このプロスタグランジンが働くことで、子宮収縮が起こり、生理が起こりますが、その際に収縮が強かったり出産経験がなく子宮の出口が狭かったりすると、痛みを強く感じることになります。 また、痛みには自律神経も関わっています。自律神経の乱れが生理痛に影響するメカニズムはこう。 まず、過度にストレスがかかったり、疲れがたまったりすると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、交感神経が優位のままで心身に緊張状態が続きます。そして交感神経の作用により、血流循環が悪くなっていきます。血流不良によって子宮にうっ血が起こり、生理痛をよりひどく感じるようになってしまうのです。
自律神経の乱れによって生じる生理時の不調を和らげるためには、自律神経のバランスを整える生活習慣を身につけることが大切です。 睡眠不足は疲労の原因となり、自律神経の乱れにつながります。夜にパソコンやスマートフォンの画面を見るのは控え、夜ふかしせずに、しっかりと質のよい睡眠をとりましょう。 また、冷えは血管を収縮させ、血流を滞らせるので副交感神経が働きにくくなります。入浴はぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、身体を温めることをおすすめします。なによりお腹、腰、足を温めることが大切です。 そして自分が好きなことをする時間を作り、ストレスを溜め込まないようにしましょう。 軽めの運動は血流を促し、緊張状態にある筋肉をほぐし、心身をリフレッシュさせてくれます。 自律神経のバランスが崩れることで起こる不調「自律神経失調症」は、男性よりも女性に発症することが多いといわれています。 自律神経が乱れやすいこの時期の不調を放置したままにすると、症状が進んで慢性的な不調になってしまうことも。 本格的な冬を迎える前に、身体の調子を整え、健やかな暮らしを目指しましょう。 医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)